渋谷駅の幼児虐待動画投稿を受けて。これからぼくらがすべきこと。(前編)

数日前から、ある動画が話題になっていました。渋谷駅で、母親らしき女性が子どもを虐待する動画です。その動画は、目撃者によって拡散され、27日のニュースでは、その女性の身元が特定されたと報じられました。

弁護士ドットコム トピックス:渋谷駅「幼児虐待」動画 「女性が特定された」と警察から投稿者に連絡
http://www.bengo4.com/topics/1707/

この撮影者の行動の是非については、様々な意見があります。ただそのニュースの中で、以下のような記述がありました。

「児童虐待防止法6条1項によると、虐待を受けた児童を発見した人は、福祉事務所などに通告する義務がある。そのことについて、○○さん(○○は筆者修正)は『残念ながら知らなかった』としたうえで、『こうした現場に遭遇した際、一般人はどう行動すれば良いのか。110番のような通報先を設けて、もっと認知度を高めていくことも必要かもしれない』と指摘していた。」

みなさんは知っていましたか?
ぼくら国民すべてに「通告する義務」があるんです。

虐待を発見したときに生じる「ぼくらの義務」

この義務は、実は児童虐待だけではありません。

国内には、今回の法律である児童虐待防止法(児童虐待の防止等に関する法律 / 2000年11月改正・施行)の他に、高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律 / 2006年4月施行)、障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律 / 2012年10月施行)の、3つの虐待防止法があります。

これらはいずれも、虐待を受けたと思われる人を発見した場合、自治体や担当セクター(子どもの場合は児相など)に通告する義務を、国民に課したものなのです。

今回は、通告せずに、ネット上にその動画がアップされました。ご本人は悩みに悩んだ末にされたことだとおもいます。でも、これからは、この行為は避けるべきだとおもいます。

一度アップした動画は、本人が削除してもネットに残り続けます。何より、この子どもがいつの日か動画を目撃することがあるかもしれません。もちろん母親も。親子の知り合いが見ることもあるでしょう。

母親や子どもが置かれている状況を理解できないまま行動すると、想像できる範囲を超えたリスクが当事者(それはある時には、発見した人に対しても…)に降りかかります。

なので、虐待されている現場、あるいは、それが想定される状況に立ち会ったときには、まず虐待を受けている人(ここでは子ども)の安全を(全力で)確保し、速やかに通告してほしいとおもいます。

実際に現場を目の当たりにしたら、様々な立場の人たちの様々な気持ちが思い浮かび、通告を躊躇してしまうでしょう。

でももっとも優先すべきは、虐待を受けている被害者の気持ちであり命です。その子はその先もずっと虐待を受け続け、生涯にわたって傷を抱え込むことになるかもしれません。「もしものこと」があってからでは遅いのです。

なので、躊躇することなく、通告してほしいです。

例えば、福岡市の児相は「泣き声が聞こえる」といった、通称「泣き声通告」については、児相職員ではなく委託されたNPOが訪問確認することがあります。

虐待ではないのに、虐待だと勘違いされることは、子育てに苦労している親御さんにとっては少なからずショックとなります。その気持ちに配慮した接触が工夫されているケースもあります。

厚労省は、「児童相談所全国共通ダイヤル」をつくっています。これを機会に登録して頂けるとありがたいです。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv39/

福岡県にお住まいの皆さんはこちらをご覧ください
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/jidougyakutaituukoku.html

情報が知られていない、届けられていないこと

さて、以上のような義務が、ぼくら国民にあるわけですが、その情報が「知られていない」という点が問題です。

それは、今回のケースのように知らない人が問題というわけではありません(決して)。その情報がちゃんと国民に届けられていない現状が問題であり、そこに「デザイン」が貢献できる(というか、すべき)のではないか、と考えています。

今回、福岡市児相のホームページのリニューアルデザインに取り組んでいるのは、そこに対する問題意識もあります。【田北】

<後編につづく…>


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